私たちがホームステージングする目的は物件をドレスアップし物件の魅力を引き出し、差別化を図ることにあると思っています。
海外ではホームステージングは30年以上の歴史がありますが、リーマンショックの後など不況時に市場に販売物件があふれ、差別化の戦略として一気に広がったと言われています。
国内ではホームステージングはまだまだ浸透していませんが、この事業は住宅市場に大きく左右されますので、簡単に今後の住宅市場動向について考えてみたいと思います。
国内中古住宅市場の伸びしろ
現在国内では約80万戸程度の新築が毎年供給されています。そのうち賃貸用の物件を除く住宅用では約50万戸程度。対して住宅用の中古住宅流通量は毎年約16万戸程度となっています。
参考:国交省による公開資料(既存住宅流通を取り巻く状況と活性化に向けた取り組み:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/hyouka/content/001313273.pdf)
中古住宅流通量の住宅市場における割合は14.7%と計算されておりますが、こちらの算定には新築着工件数に貸家も含まれていますので、少し低めに数字が出されています。貸家用物件を除いた場合は23%程度中古住宅の流通割合になります。それでも依然として欧米に比較すると低い割合です。
現在国策で中古住宅市場を拡大させる方向に動いています。例えば長期優良住宅の残価設定ローンの取り組みなどもその1例です。
様々な国策で主導される中古市場の形成
さて中古住宅市場を拡大させるメリットとは何か考えてみます。これまでの新築中心の住宅市場では、下記のような問題がありました。
- 国民の所得のうち、住居購入で失われる資産が甚大。5000万の家を頑張って購入しても、ローン返済が終わるころには住宅価値が2000万程度になるならば、3000万を失っていることになります。
- サステナブルな社会の実現という観点からもスクラップ&ビルドはロスが大きい。
上記の問題点を改善するため、国策で不動産買取業や長期優良住宅に対する税制面の優遇、インスペクションの普及推進、長期優良住宅に対する残価設定ローンの取り組み等様々な政策を進めています。
一部で始まっている残価設定ローン導入はすぐに市場に浸透するとは考えにくいですが、目論見としては長期優良住宅が市場に増加することにより、長く住める安心な住宅を増やし、将来的な中古市場の形成を目指していると思われます。
物件余りの中で高まるホームステージングの必要性
そのような中で2023年度からは国内の世帯数は減少しはじめ不動産市場には物件があふれていくことになります。
従来は新築メインの市場で、注文住宅は事前に生活イメージを作ってから設計しますし、建売などは、どの物件もだいたい決まった間取りですから、具体的生活イメージが容易につけやすく、また相場がきまっており、そこに合っていれば売れるという市場でした。
そのためコストをかけて、ホームステージングを行い販売する必要もなかったのですが、今後中古住宅が増えてきた場合は、様々なタイプの物件が市場に出回り、その物件ごとの持ち味を最大限に引き出さないと、差別化できず売れない状況になるのではと想像されます。
そのため、今後はリフォームを行い、ホームステージング等による物件のドレスアップを行うことにより、中古住宅への感覚的な好感度を向上させる必要性が増しますので、住宅市場のニーズとしてこの事業に対する需要は増加する傾向が見込まれます。またその中で新築もまたホームステージング等による一層の販売の工夫が必要になるかもしれません。
また現在ホームステージングを実施する物件は3大都市圏に集中していますが、これから徐々に郊外、その他地方の物件へも浸透していくでしょう。
物件の特性やデザインに合ったホームステージングを行うことにより、より物件の魅力を引き出し、ご購入されたお客様が住まれてからのおしゃれな生活イメージをしやすくすることで、物件の差別化を図ることが可能です。
例えば変わった間取りの物件だとしても、それに合う家具や配置を工夫することにより、何もない状態では使いにくい間取りと判断されてしまう物件でも、逆に魅力を伝えることも可能です。